Yahoo!オークションで取引されているALPS MDプリンタの実態調査(2010年上期)

ALPS MDプリンタ愛好ユーザーの皆様へのサポート開始から、丸1年が過ぎました。 皆様からのご要望に応えるためだけに走り続けた、あっという間の1年でした。 皆様からの助言や関係会社の多大なご支援のおかげで修理・メンテナンス・プリンタ販売と、サービス内容も充実させていただき、それらを礎に、また新たな1年をスタートしたいと思います。 2周年目にも少なくとも3つの新サービスを開始する予定です。ご期待ください。

さて、ALPS MDプリンタの弊社修理サービスにおいて、修理依頼を受けるプリンタの約半数は、持ち主の皆さんがYahoo!オークションで入手されたものです。 メーカーから直接購入し、それを大事にお使いになっていたものとオークションで入手されたものは、解体修理をしますと、その差は明らかに違います。 もちろん大事にお使いになられていたユーザーの方がオークションを通して手放すというケースもありますが、おおむね複数のユーザーや回収業者を経由しているものが多く、無理に解体して重要個所が折れていたりヒビが入っていたりするもの、部品が欠損しているもの、材質に不適合なオイルがスプレーされ劣化が加速しているものなどです。

弊社としては、弊社のメンテナンス済みの製品を購入されるのであっても、Yahoo!オークションで入手されるのであっても、このALPS MDプリンタを初めて手にするユーザーの皆様にALPS MDプリンタをベストな状態で使用していただき、末永く愛用していただきたいという気持ちを持っています。

そこで、弊社ではまずYahoo!オークションで取引されているALPS MDプリンタの実態をユーザーの皆様にご協力いただきながら調査を行いました。結果は以下の通りです。レベル分けは抽象的ですがわかりやすく記載いたしました。Aレベルにつきましては、表現が少々手前味噌で恐縮ではありますが何卒ご容赦ください。

調査期間:2010年1月~6月
対象機種:MD-1000(5)/MD-1300(4)/MD-1500(7)/MD-5000(26)/MD-5500(18) 以上合計60台
丸カッコ内は調査台数です。

Aレベル:弊社の修理メンテナンス済み『6カ月+2年間保証』レベル
Bレベル:少なくとも2年間は問題無く印刷できそうなレベル
Cレベル:少なくとも1年間は問題無く印刷できそうなレベル
Dレベル:とりあえず印刷できているが、いつ故障してもおかしくないレベル
Eレベル:何とか印刷できているが、正常な動作ではないレベル
Fレベル:正常な印刷ができないレベル
Gレベル:印刷動作をしないレベル

正常動作品であることが商品情報欄に記載されている、もしくは正常と思われるテスト印刷結果が写真掲載されている出品物
合計15台中、A(0),B(2),C(2),D(6),E(3),F(2),G(0)

正常動作品であることもジャンク品(正常に動作しない出品物)であることも共に商品情報欄に記載されていない出品物
合計26台中、A(0),B(0),C(1),D(5),E(7),F(7),G(6)

ジャンク品(正常に動作しない出品物)であることを商品情報欄に記載されている出品物
合計19台中、A(0),B(0),C(0),D(4),E(2),F(6),G(7)

尚、調査にあたり、商品情報説明欄にアルプス電気からの5年以内の購入であり、かつ正常動作品であることが記載されている出品物に関しましては落札の対象から外しております。

それぞれの動作レベルの判定の際は、弊社にて簡易清掃を行ったうえで動作確認を行いました。また、A~Dレベルの判定は、解体修理メンテナンスを行う過程において各主要部品の状態をチェックし判断いたしました。

今回調査を行いました上記60台につきましては、58台を弊社にて有償修理を行いAレベルとした上で、ご協力いただきましたユーザーの皆様にご返却いたしました。 尚、2台につきましては弊社にて廃棄処分と致しました。

今回の調査によりオークション出品物に関して以下のような状況を確認いたしました。

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1.オークション出品されているメーカーからの購入時期が5年以上経過してしているALPS MDプリンタは、いずれの機種も総じて状態がよくありません。 テスト印刷の結果において出品者本人も印刷不具合に気がつかず正常動作品として出品しているケースもあります。 また印刷および動作の不具合個所の情報を意図的に掲載せずに出品していると思われる悪質なケースもあります。

2.理由は何であれ、出品に際して動作確認や印刷確認を行っていない出品物は、正常に印刷できない可能性が極めて高くなっています。

3.少なくとも出品物の7割以上が過去にオークションで入手されたもののようです。更にそのうちの半数は3回目以上の出品と推定されます。

4.解体してメンテナンスや注油を行い正常動作を確認したと謳っている出品物においては、部品によっては劣化を加速してしまうオイルが無造作にスプレーされています。 本来それぞれの部品に最適な種類のオイルを必要十分な量を必要としている個所のみに限定して注油しなければならないのですが、そのような長期的な機器の使用を前提としたメンテナンスとは程遠い処置がなされています。(注1)
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オークションにおけるALPS MDプリンタを巡るこれらの状況においては、ユーザーの皆さんが本来の性能を持ったALPS MDプリンタを手にする可能性を低くし、その結果まともな印刷ができるALPS MDプリンタを入手するまでに複数台を落札し、正常に印刷できないものをオークションに再出品し、それをまた別の方が落札し…の繰り返しが起こります。プリンタは宅急便業者により日本列島を行ったり来たりすことになり、プリンタが本来想定されているよりもはるかに過酷な振動や衝撃を受けることになります。 更にその過程で前述のような無造作オイルスプレー攻撃を受けると、いよいよそのプリンタの性能は低下していきます。
実際に、弊社への問い合わせとして、「オークションで入手したのだけれど、このような印刷状態は正常なのでしょうか?」「オークションで購入して1年も経たないのにエラーランプが点灯するが、何とか復旧できないものだろうか?」というような質問をよく受けます。可能な限りのアドバイスはさせていただいていますが、修理が必要なケースも多くなっています。
このままオークション市場を放置しますと、朽ち果てていくALPS MDプリンタが増え、性能の低いMDが高値で取引される荒れた市場になってしまうと予想されます。

アルプス電気が生産を終了した現在でも、このプリンタが素晴らしいプリンタであることに変わりありませんし、継続して使用していきたいとお考えのユーザーの方も、多くいらっしゃいます。 初めてこのプリンタの存在を知り、期待を胸に購入を検討されていらっしゃる方も多いと思います。 それらのユーザーの皆様のためにも、全国に残っているALPS MDプリンタの性能を落とすことなく修理メンテナンスを繰り返し、必要とされているユーザーの方が入手しやすい環境を作り出していくことが大事であると考えます。

(注1)弊社の修理サービスやメンテナンスサービスにおいては、当該機がアルプス電気以外で解体された可能性がある場合は、一度塗布されているオイルを洗浄した後に部品の確認を行い、部品の交換を含めて適切なメンテナンスにより長期間の使用に耐えるように整備致します。そのような可能性がある場合は、ご依頼いただく際に、必ずその旨を合わせてご連絡ください。
弊社への修理依頼品においてALPS MDプリンタを短命にしてしまう[解体して無造作なオイルスプレー]は増加傾向にあります。特にオークションにおいて、「解体して整備した」「グリスアップを施した」などの表記のある出品物にはご注意ください。

(象のロケット 技術センター)