埃・粉じん対策。恐怖の砂埃。

[よくある質問&アドバイス]

長谷です。 多忙な夏シーズン(8月、9月)が過ぎ、1年間で最も忙しい12月、1月を迎えるまでの間、時間の許す限り記事を書きたいと思います。
夏は、夏休み・お盆休みを利用しての趣味のデカール作成や、暑中見舞い印刷などでプリンタの稼働率が上がり修理依頼や新規購入のご依頼が多く、例年12月、1月は年賀状印刷による稼働率アップでご依頼が非常に増えます。 プリンタの修理につきましては、なるべく12月に入る前までにご依頼いただきますように、ご協力をよろしくお願いいたします。

埃・粉じん対策。恐怖の砂埃

(アドバイス)
『なるべく故障しないように取り扱うにはどうしたらよいですか?』との質問を皆様からよくいただきます。『インクカセットのセットの仕方』、『フロントカバーの閉め方』に続きアドバイス第3弾です。
是非ご一読いただき実行してください。

ALPS MDプリンタにとって最も怖い敵は、埃や粉じんです。特に砂ぼこりはプリンタに致命的な損傷を与えてしまいます。

印刷対象物に非接触で微小な液滴を噴射するインクジェットプリンタと違い、ALPS MDプリンタは、ゴム製のプラテン上にある印刷対象物にテープ状のインクリボンを印字ヘッドでしっかりと押し付けながら印刷します。
リボンテープは巻き取られ、印字ヘッドはそのリボンテープ上を滑りながら、プリンタの右側から左側に向かって移動しながら印刷します。
印字ヘッドの右端には40ミクロン(0.04㎜)の発熱ドットが240個1列に並んでいます。この発熱ドットの一つ一つが発熱しリボンテープに塗布されているインクを溶かして印刷対象物に印刷します。
ドットが破損するとそのドットは発熱しなくなり、印刷方向(キャリッジユニットが印刷の際に左右に移動する方向。つまり紙送り方向と垂直方向。)に印刷されない横スジが発生してしまいます。『ドット落ち』と呼ばれる状態です。
プリンタの使用用途が、紙への通常文字サイズのテキスト印刷であれば、仮に240個のうち1ドットや2ドットが破損したとしても、肉眼ではその損傷に気付くことはほとんどありません。またデカール印刷においても、印刷するマークが小さければ、ドットが破損していない部分で印刷されたマークを利用するという手も使えます。
しかし、一辺7㎜程度以上の大きさのベタ印刷によるマークなどではドットの破損が目立ってしまい修理が必要となります。

ドット破損の最も大きな原因は、粉塵、特に砂ぼこりです。 硬い砂の粒子は、容易にドットを破損させてしまいます。
砂ぼこりの多い、大通りの近くで窓を開けっ放しの室内で印刷しますと、仮に新品のプリンタであっても購入1日目で印字ドットを破損されてしまう方もいらっしゃいます。

『印字ヘッドはプリンタの内部にあるのに、どうして砂ぼこりが入り込むのですか?』
グッド・クエスチョンです。 これを理解しなければ対策の施しようがありません。

風の強い日に窓を開けっぱなしにし2時間後、きれいに拭いていたはずの机の上をなでると指に白っぽい粉が付着しませんか? それが砂ぼこりです。
波打ち際にあるのは『砂』。これはもちろん肉眼でもはっきりと見える粒子ですが、『砂ぼこり』レベルになると肉眼では見えづらくなります。しかしながらそれでも40ミクロンのドットを破損させる危険性は十分なのです。もちろんその粒径が大きいほどドットを破損させる確率は上がります。極めて小さければドットを破損させることはありません。

埃(ほこり)は柔らかいので直接ドットを破損させることはありませんが、埃に砂ぼこりが絡んできますので、埃も要注意です。

●砂ぼこりが印字ヘッドに接近するまでの主な経路は次のように考えられます。
1.フロントカバーを開けた際に風で運ばれた砂ぼこりが直接プリンタ内部に付着する。
2.紙送り部の開口部に付着した砂ぼこりが、用紙の送り込みと同時にプリンタ内部に引き込まれていく。
3.もともと用紙に付着していた砂ぼこりが、プリンタ内部に引き込まれていく。
4.砂ぼこりが付着したインクカセットをプリンタ内部にセットしてしまう。
5.機器内部の隅にたまっていた砂ぼこりをエアブローで吹き飛ばし付着して欲しくないところに付着させてしまう。(寝た子を起こしてしまう)

●次のような印刷環境は要注意です。
6.風が強い場所。
7.自動車がぶんぶん走る大通り沿いの店舗。
8.金属やガラスの研磨工作機がある室内。
9.エアコン吹き出し口の近く。
10.ネイルアートやデコレーションの接着しているストーンを除去する際の研磨機がある室内。
11.土足の店舗や室内。
12.ALPS MDプリンタをベッドだと勘違いしている猫がいる室内。

ユーザーの方が可愛いイラストを描いてくれました。

●以下の注意ポイントも忘れないようにしてください。
13.往復使用するインクカセット(エコブラック光沢仕上げ2)は特に埃・粉塵対策を徹底してください。(テープのどこかに砂ぼこりが付着していると、往復するたびにドットを破損する可能性が出てきます。)
14.作業台やインクカセットを拭き取るためのタオルが、もし洗濯して屋外に干しておいたものであるならば、そのタオルには砂ぼこりがいっぱい付着しています。
15.風の強い日に外出から帰宅したあなたの洋服や髪の毛には多くの砂ぼこりが付着しています。
16.短時間であっても屋外に放置したプリンタや屋外倉庫に放置していたインクカセットの利用はその後の印刷でドットが破損する可能性が高いです。

もちろんしっかりと埃・粉塵対策を行えば、10年でも20年でも印字ヘッドは傷つかない設計になっているプリンタですので、是非、次のことに気を配りながら末永くご愛用ください。
1.上記1~16を理解しておく。
2.使用しないときには本体をポリエチレン袋に入れておくか、表裏を明記した広めのポリエチレンシートで本体を包むように覆って保管する。
3.作業テーブルはきれいなタオルやペーパータオルで拭ききれいな状態にする。
4.印刷の際には、よくはたいた広めの紙(広告紙など)を本体上部に置いておく。
5.インクカセットを直接作業テーブルに置かない。埃・粉塵が侵入しない容器に保管し、そこから直接プリンタにセットする。どうしても作業台に置きたい場合はよくはたいたきれいな紙の上に置く。
6.印刷用紙やシートを直接作業テーブルに置かない。袋から取り出したら直接プリンタにセットする。どうしても作業台に置きたい場合は、よくはたいたきれいな紙の上に置く。MD用ビューカルに昇華印刷を行う場合など、シート表面をアルコールで拭く場合も同様にきれいな紙の上で作業する。
7.用紙やシートをプリンタにセットする際には用紙やシートを軽くはたいてからセットする。
8.埃まみれのインクカセットや、床に落としたインクカセットや用紙はできれば廃棄する。そのインクカセットを使用したい場合は、カセット表面を少し湿らせたきれいなタオル(洗濯した後、外で干したものはいけません)やペーパータオルでふき取り、その後、息を強く吹きかけながら巻き取り方向に10回ぐらい巻き取ってから使用する。もしそれが往復利用するインクカセットの場合は廃棄する。
9.窓は閉めて印刷する。
10.紙送り開口部やフロントカバーを開けて内部をクリーニングする際には、エアブローで埃・粉塵を吹き飛ばすのではなく、柔らかな清潔なブラシで軽く掃きながら掃除機を使って吸い込むように掃除する。


×このようにインクカセットや用紙を直接作業台の上に置いてはいけません。


○印刷中もよくはたいた広告紙1枚を本体の上に置いておきます。


○休憩中もよくはたいた広告紙1枚を本体の上に置いておきます。


○インクカセットを作業台の上に置く場合は、よくはたいたきれいな紙の上に置きます。


○シートを作業台の上に置く場合は、よくはたいたきれいな紙の上に置きます。シート表面を拭いたり、シートをカットする場合も同様です。



○インクカセットは埃や粉じんが入らない密閉容器や箱に保管する。
プリンタのご購入や修理をご依頼のユーザーの皆様へはプリンタ発送の際に、作業性も考慮した写真のような『粉塵防止ボックス』を添付しております。


プリンタ、優しく可愛がってあげてください。


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(象のロケット 技術センター)