ケヴィン・プッツ
≪めぐりあう時間たち≫
世界初演 METライブビューイング 2022-2023 第3作
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原題:THE HOURS
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(C)Paola Kudacki/Metropolitan Opera
配給:松竹
2022年製作 米 (休憩1回+175 min)
出演者:
ルネ・フレミング
レハール
≪メリー・ウィドウ≫
METライブビューイング 2014-2015
ドヴォルザーク
≪ルサルカ≫
METライブビューイング 2013-2014
R・シュトラウス
≪ばらの騎士≫
新演出 METライブビューイング 2016-2017
ケリー・オハラ
モーツァルト
≪コジ・ファン・トゥッテ≫
新演出 METライブビューイング 2017-2018
レハール
≪メリー・ウィドウ≫
METライブビューイング 2014-2015
ジョイス・ディドナート
ロッシーニ
≪ラ・チェネレントラ≫
METライブビューイング 2013-2014
ドニゼッティ
≪マリア・ストゥアルダ≫
METライブビューイング 2019-2020
ジェイク・ヘギー
≪デッドマン・ウォーキング≫
MET初演 METライブビューイング 2023-2024 第1作
ヘンデル
≪アグリッピーナ≫
MET初演 新演出 METライブビューイング 2019-2020
カイル・ケテルセン
、
キャスリーン・キム
あらすじ:
1920年代のイギリスで、小説「ダロウェイ夫人」を執筆中の人気女性作家ヴァージニア・ウルフ。 1950年代のロサンゼルスで、夫のバースデーケーキを息子と作成中の妊婦ローラ。 2001年のニューヨークで、親友の文学賞受賞パーティーを準備中の女性編集者クラリッサ。 3つの時代の3人の女性の1日の物語。 METライブビューイング2022-2023シーズン第3作。 2022年12月10日公演のスクリーン上映。 英語(日本語字幕付き)
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:フェリム・マクダーモット
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3人のヒロインを演じるベテランスター歌手の、通常のオペラとは一味違う表情や歌い方に見とれ聴き惚れます。 違う時代にいるはずの人々が同じ舞台上に立ち、同時に歌う場面もあり。 咲き乱れる花や水の流れ、背景のようなダンサーなど、舞台ならではの演出も楽しめます。
※もっと詳しいあらすじについては、本ページ下をご覧ください。
【「めぐりあう時間たち」について】
作曲者:ケヴィン・プッツ(1972年〜:アメリカ)
原 作:マイケル・カニンガム(1952年〜:アメリカ)
台 本:グレッグ・ピアス
構 成:全2幕
言 語:英語
初 演:2022年11月22日、ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場
≪参考作品≫
アメリカ映画(2002年製作)『めぐりあう時間たち』
≪『METライブビューイング2022-2023シーズン』シリーズ≫
第1作 ケルビーニ
≪メデア≫MET初演
第2作 ヴェルディ
≪椿姫≫
第3作 ケヴィン・プッツ♪
≪めぐりあう時間たち≫世界初演
第4作 ジョルダーノ
≪フェドーラ≫新演出
第5作 ワーグナー
≪ローエングリン≫
第6作 ヴェルディ
≪ファルスタッフ≫
第7作 R・シュトラウス
≪ばらの騎士≫
第8作 テレンス・ブランチャード
≪チャンピオン≫MET初演
第9作 モーツァルト
≪ドン・ジョヴァンニ≫新演出
第10作 モーツァルト
≪魔笛≫
<スタッフ厳選 超お薦め映画作品!>
★★★★
本オペラ『めぐりあう時間たち』は、作曲家ケヴィン・プッツと脚本家グレッグ・ピアスがMETに依頼された「世界初演」作品。原作はアメリカの男性作家マイケル・カニンガムのピュリッツァー賞受賞小説。この小説を原作とした2002年製作のアメリカ映画
『めぐりあう時間たち』
では、ニコール・キッドマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した。劇中に登場する女性作家ヴァージニア・ウルフ(1882〜1941:イギリス)の小説「ダロウェイ夫人」は、革新的モダニズム文学と呼ばれている。
異なる時代と場所で生きる3人の女性が主人公で、彼女たちの運命的な1日を描いている。背景の色彩や照明が違っていたり、舞台装置が巧みに移動して、混乱しにくくはなっているが、時代が行ったり来たりするので、先にある程度ストーリーを頭に入れておきたいという方は、下記を参考にして頂きたい。少々難解なオペラになるのではと心配したが、映画版より分かりやすかったのは嬉しい驚きだった。ブラボー!!!
1923年、イギリス郊外の町。自殺を繰り返していた女性作家ヴァージニア・ウルフ(ジョイス・ディドナート)(映画版ではニコール・キッドマン)は療養のため、出版社を共同経営する夫レナードと田舎で暮らしているが、早くロンドンに戻りたがっている。小説『ダロウェイ夫人』を執筆中に、彼女の姉ヴァネッサが3人の子を連れて訪ねて来た。実はヴァージニアは姉に想いを寄せていたのだった。
1999年、アメリカ・ニューヨーク。50代の女性編集者クラリッサ・ヴォーン(ルネ・フレミング)(映画版ではメリル・ストリープ)は、長年のパートナーである女性サリー、そして第三者との人工授精で出産した年頃の娘と暮らしている。彼女が何かと世話を焼いている親友の男性作家リチャード(カイル・ケテルセン)(映画版ではエド・ハリス)が文学賞を受賞したため、今日は内輪の祝賀パーティーを開く準備に追われているが、エイズを患い身体が衰弱しているリチャードは乗り気でない。リチャードはクラリッサを“ミセス・ダロウェイ”いうあだ名で呼んでいる。実はクラリッサとリチャードは、若い頃は恋人同士だった。そしてリチャードにも以前は男性の恋人ルイスがいた。
1949年、アメリカ・ロサンゼルス。第2子を妊娠中のローラ・ブラウン(ケリー・オハラ)(映画版ではジュリアン・ムーア)は、小説「ダロウェイ夫人」を愛読している。今日は夫ダンの誕生日。息子リッチー(後の作家リチャード)とケーキを作っているところに、友人の女性キティがやって来て、病気と子どもが出来ない悩みを打ち明ける。実はローラはキティに想いを寄せており、いつかこの家を出たいと思っていた。
3人の女性はパートナーと愛し合っており、生活にも困っていない。今の幸せに満足して生きていくこともできる。しかし、時に「禁断」とされる、両性愛、同性愛、近親愛など、世間一般の枠を超えた他者への愛に心が揺れている。時代による女性の生き方や暮らし方の違いにも注目だ。物語は「死」の影に覆われている。悩める登場人物たちは、死にたいのか? 生きたいのか?
違う時代にいるはずの人々が同じ舞台上に立ち、同時に歌う場面がある。咲き乱れる花や水の流れ、背景のようなダンサーなど、舞台ならではの演出も楽しめる。衣裳やメロディーも、少し前のアメリカのイメージ。人種のるつぼと称されるニューヨークらしく、様々な肌の色の歌手が登場。3人のヒロインの、通常のオペラとは一味違う歌い方や表情に見とれ、聴き惚れた。もちろんオペラだが、ミュージカルを見ているような気分になる。
原作小説のオペラ化を提案したのは、クラリッサを演じている世界トップのオペラ歌手ルネ・フレミングで、若い頃から演じてきた役を卒業し新しい役に挑戦したかったとのこと。キャリア女性を演じるルネ・フレミングに、白いスーツが良く似合っていた。古典オペラのヒロインは若い美女が多い。俳優や歌手に年齢はないとはいえ、やはり年相応の役を演じた方がしっくりくるし、劇場側も次世代のスター歌手を育てる必要がある。費用はかかるが今回のような新作オペラがもっと作られれば、年齢を重ねたスター歌手も舞台の真ん中で輝き続けることが出来るだろう。ベテランのオペラ歌手が新しいキャリアを模索して実現した、ニューヨークの現代オペラ。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
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