ムヒカ世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

ムヒカ世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ

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2020年製作日　（98 min）

監督：田部井一真
出演者：
（ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキー、他）

あらすじ：2012年、リオデジャネイロで開かれた国連会議にて現代の消費社会を痛烈に批判し、人類にとっての幸せとは何かを問うたウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ。その感動的なスピーチ動画は瞬く間に世界中で話題になった。　テレビ番組でムヒカを取り上げ絵本出版と来日にも尽力した田部井監督が、彼を3年間追い続けた政治家ドキュメンタリー。

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最初は突撃取材だったにもかかわらず、訪れたこともない日本の歴史や文化について熱心に語っていた大統領（任期2010～2015年）。　なぜそんなに東洋の小さな島国のことに詳しいのか？　柔和な顔だちながら心は今もバリバリの“活動闘士”であるムヒカの志、夫妻で来日した時の様子、今の日本人へ向けたメッセージ等が語られます。

≪参考作品≫
『世界でいちばん貧しい大統領愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』
『ハッパGoGo 大統領極秘指令』

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出・集会が自粛され、学校までが休校になっている。将来への不安感が必要以上の買いだめを招いたため、品不足も続いている。ほとんどの業界が収入源となり、景気にも多大な影響を及ぼしている。

田部井一真監督製作の本作『ムヒカ世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』は、コロナ自粛で2020年4月10日公開のはずが延期となってしまったが、エミール・クストリッツァ監督製作の『世界でいちばん貧しい大統領愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』は、2020年3月27日に無事公開された。両方とも南米ウルグアイの第40代大統領（任期：2010～2015）ホセ・ムヒカ（1935～）のドキュメンタリーで、同時期の公開予定だっただけに混同しそうだった。どちらも良作なので、両方ご覧になるとよろしいだろう。

ムヒカ大統領が世界中の人気者になったのは、2012年にブラジル・リオで開催された「国連持続可能な開発会議」での「…本当に貧しい人とは、いくら物があっても満足しない人…」という、消費社会に一石を投じる内容のスピーチからだった。その質素な暮らしぶりも知られることとなり、「世界でいちばん貧しい大統領」と呼ばれるようになった。日本でも、伝説のスピーチは子供向けの絵本にまで翻訳され、ドキュメンタリーがテレビ放送（田部井監督はこのTV番組の担当だった）され、大統領は時の人となった。

大統領としての実績で有名なのは、「妊娠初期の中絶を合法化（2012年）」「同性婚を合法化（2013年）」「世界初となる大麻栽培・売買を合法化（2013年）」等で、それはカトリックの多い南米では衝撃的な「合法」化だった。大麻合法化に関してはフィクションのコメディ映画『ハッパGoGo 大統領極秘指令』まで作られていて、ムヒカ氏本人も出演し笑わせてくれる。そして、大統領時代には給料の大半を寄付して最貧困層向けの住宅建設費に充て、豪華な大統領官邸には住まず上院議員の妻ルシア・トポランスキーと共に質素な農場の平屋に住んでいた（今も）。普通ならセキュリティー的にもあり得ない、庶民的な人物である。

柔和で気さくなおじいちゃんというイメージだが、実は軍事政権下のウルグアイで極左ゲリラとして戦い、13年に渡る獄中生活を送った経験もあるバリバリの革命闘士だった。しかし大統領当選後、強いリーダーシップは発揮したものの極左独裁政権にはならなかった。社会主義と資本主義のいいとこ取りをしようとする柔軟な姿勢は、獄中での膨大な読書から培われたものだという。もちろんどんな政治家も支持率100％ではない。どこの国でも、社会的弱者への気配りは支持率アップにつながる。貧困層からの人気は絶大でも、富裕層からは煙たがられそうだし、「パフォーマンスが得意な目立ちたがり屋」と揶揄されることもあるという。政治家としての評価は今後のウルグアイ次第だが、少なくとも国の知名度と好感度アップに貢献したことは間違いない。遠い異国の日本人は、彼の清貧・平和思想の素晴らしい面だけを参考にすれば良いのではなかろうか。

ムヒカ氏の来日時の映像やインタビューや、日本人との関わり、ムヒカ氏から見た日本および日本人へのメッセージも含まれていて、分かりやすく親しみやすい内容になっている。コロナ騒ぎに右往左往する私たちに、いま一番必要な言葉「足るを知る」を教えてくれる、ユニークな政治家ドキュメンタリー。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞