もう漫画を諦めようと決意した日、山城は見るも無残な殺人事件の第一発見者となった。警察には「犯人らしい人影は見たが顔までは見ていない」と証言するが、実はしっかり見ていた! その光景を元に、殺人鬼“ダガー”を主人公としたホラー漫画「34(さんじゅうし)」を描いたら大当たりし、たちまち売れっ子漫画家となる。人を殺した直後の犯人(SEKAI NO OWARIのボーカル・Fukase)の表情を間近で見た衝撃が、創作意欲を爆発的にかき立てたのだ。つまり、ただのお人好しではなかったと言えよう。しかし、瞼に焼き付いた犯人と、自分が生み出したダガーというキャラクターにエネルギーを吸い取られ、公私ともに順風満帆のはずが憔悴しきってしまう。山城は分不相応な成功を悔いている善人か、無理に掴んだ成功を手放さないと決めた悪人か、それとも…? 殺人事件の展開が、山城の才能と本質に大きく左右されることとなる。