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五億円のじんせい

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2019年製作日　（112 min）

監督：文晟豪(ムン・ソンホ)
出演者：
望月歩　向こうの家　カムイのうた　ソロモンの偽証前篇・事件　映画妖怪シェアハウス白馬の王子様じゃないん怪
山田杏奈　ミスミソウ　山女　ジオラマボーイ・パノラマガール　樹海村
森岡龍　エミアビのはじまりとはじまり　あぜ道のダンディ　ハロー！純一　望郷

松尾諭、平田満、西田尚美、芦那すみれ

あらすじ：17歳の男子高校生・高月望来（たかつき・みらい）は、「望来ちゃんを救う会」の寄付五億円のお蔭で6歳の時に心臓移植を受けた。　望来の夢は一応医者だが、本当はそんな成績ではない。　寄付金の呪縛から解き放たれるためSNSの匿名アカウントで自殺を宣言した彼に、「五億円稼いで借金チャラにしてから死ね」というメッセージが届く…。　青春ドラマ。

脚本：蛭田直美　主題歌：ZAO『みらい』

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「五億円稼いでから死んでやる」と奮起し旅に出た望来ですが、真面目にコツコツ働くんじゃ一生かかっても稼げない！。　危険な場面もなぜか微笑ましい、フレッシュな感覚の成長物語です。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★
病気になると大抵の人は健康保険を使うが、近年は高額な自費治療も増えてきた。私も歯科医院や病院で保険適用外の治療を受けることがあるが、医療費控除で戻って来る金額は僅かだし、民間の医療保険が適用されないことも多い。もし自己負担額が数億円だと言われたら、自分のためなら諦めるだろう。しかし、愛する家族それも幼い子どもだったら、どうだろうか…？

本作の主人公は17歳の男子高校生・高月望来たかつき・みらい（望月歩）。彼は幼い頃、五億円の募金により海外で心臓移植手術を受け元気になった。ちょっとした有名人で、毎年行われる「望来ちゃんを救う会」の報告会では、母親（西田尚美）と共に頭を下げ「お蔭様でこんなに大きくなりました」と、近況報告とお礼を言い続けており、質素で謙虚で品行方正な暮らし心がけているように見える。誰も金を返せとは言わないし、陰口を叩かれてもいないのだが、無言の重圧を感じながらこの親子は生きてきたのだ。そのプレッシャーは、社会から何らかのサポートを受けて生活している人の多くが感じているものかもしれない。

思春期を迎えた望来は、そんな重圧に押しつぶれそうになっている。自分は五億円の価値があるような「いい子」じゃないし、先進医療への恩返しのため「夢は医者」と言ってみたけれど医学部に合格できるような成績でもない。「もう嫌だ、死ぬ！」と宣言したところ、「五億円返してから死ね」というメッセージが届く。ほーら、やっぱり！　高額寄付に見合わない生き方を、世間様は許してくれないのだ。五億円の返済なんて、一生かかっても無理なのに。自殺も自由にできなくなった望来は、勢いで家出し次々と怪しいアルバイトを始める…。

望来を演じている望月歩は2000年生まれで、撮影時は役とほぼ同年齢。まだ青年とは言えない少年らしさと透明感がありキラキラしている。持って生まれた「普通じゃない」ものを感じさせるが、いい子でも悪い子でもない「普通の少年」を演じることもできるのだ。同世代の女の子にモテるより、今はオジサン・オバサンに愛される時期なのかも。それが望来の、思わず手を差し伸べたくなるような愛されキャラと重なる。脚本も他の俳優陣も、全般的に好感度が高い。

ホームレス（平田満）、怪しい斡旋業者（森岡龍）、詐欺グループのリーダー（松尾諭）、添い寝ハウスの客（芦那すみれ）など、様々なタイプの人物が現れ、望来は社会の表と裏、人の優しさと心の闇、金の価値を知ることになる。多少出来過ぎな展開には目をつぶろう。一方、私たち観客は、寄付を受け取る側の心境を多少なりとも感じることができる。ユーモアたっぷりで、危険な場面までもが微笑ましい。少年が心も体もたくましく成長してゆく青春ドラマ。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞