カラーパープル : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

カラーパープル(2023年製作)

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原題：THE COLOR PURPLE

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2023年製作米　（141 min）

監督：ブリッツ・バザウーレ
出演者：
ファンテイジア・バリーノ
タラジ・P・ヘンソン　ドリーム　ベンジャミン・バトン数奇な人生　ベスト・キッド　スモーキン・エース　暗殺者がいっぱい
ダニエル・ブルックス

コールマン・ドミンゴ、コリー・ホーキンズ、H.E.R. 、ハリー・ベイリー

あらすじ：優しい母を亡くし横暴な父の決めた相手と結婚した黒人女性セリーは、自由のない生活を送っていた。　さらに、唯一の心の支えだった最愛の妹ネティとも生き別れてしまう。　そんな時、自立した強い女性ソフィアと、歌手になる夢を叶えたシュグと出会い、彼女たちの生き方に心を動かされていく…。　ミュージカル。

原作：アリス・ウォーカー

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家庭内での性的虐待、容姿の指摘、夫から妻への暴力、女性同士の愛、女性の経済的自立等、フェミニズム的要素が強いストーリー。　自由や幸せを諦め来世に希望を託していた女が、この世にも希望があることを知り、自立へ向けて立ち上がります。

≪スピルバーグ版≫『カラーパープル』(1985年製作)

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★
スティーブン・スピルバーグ監督が1985年に製作した映画「カラーパープル」は、アフリカ系アメリカ人女性作家アリス・ウォーカー（1944～）が、1983年にピュリッツァー賞を受賞した同名小説が原作で、ウーピー・ゴールドバーグが演じる黒人女性セリーの約40年間を描いた有名なヒューマンドラマ。2023年版の本作は、スピルバーグ監督ら1985年版の関係者も製作に名を連ねており、同小説のブロードウェイ・ミュージカル版を映画化したもの。

1909年、アメリカ・ジョージア州。母を亡くし商店を経営する父と妹ネティ（ハリー・ベイリー）と3人で暮らしていた主人公セリー（ファンテイジア・バリーノ：舞台版でも主演）は、男子アダムと女子オリビアを相次いで出産するが、2人とも産後すぐに里子に出されてしまい、子持ちの“ミスター”（コールマン・ドミンゴ）と結婚させられた。ストーリーは1985年版とほぼ同じで、より分かりやすくなっている。1985年版でも歌う場面は多かったが、今回はミュージカルなので更に充実。歓びや悲しみ、口に出せない魂の叫びまでもが歌い上げられる。

当時、黒人と白人は居住エリアがキッチリ分けられていたようで、登場人物のほとんどは黒人。奴隷解放から数十年が経ち、白人から差別を受けても法律的には自由黒人。ちゃんとした家に住み教育を受け人間らしい生活をしているように見える。が、それは男性に限っての話。貧乏人が全く登場しないのは、黒人差別ではなく、黒人社会における女性差別を重点的に描きたかったからだろう。家庭内での性的虐待、容姿の指摘、夫から妻への暴力、女性同士の愛、女性の経済的自立等、フェミニズム的要素が強いストーリー。アメリカの黒人がルーツであるアフリカでキリスト教の布教を行うという悩ましい話も出てくるが、そこは物語の主流ではない。あくまでも女性問題がテーマ。白人から黒人、黒人男性から黒人女性への差別は、黒人女性から黒人女性への差別にもつながる。人の差別にはキリがない。

セリーを女中扱いしている夫“ミスター”は、自由奔放な元恋人の歌手シュグ（タラジ・P・ヘンソン）に夢中で、下僕のように甲斐甲斐しく世話を焼いている。ミスターの長男ハーポ（コーリー・ホーキンズ）は妻ソフィア（ダニエル・ブルックス）の尻に敷かれ、殴ったら殴り返されて驚く。強い女に惹かれ恋人にしたがるくせに地味で従順な妻を求め、女に面倒を見てもらわなければまともに暮らせない男たちに笑わせられる。

　
セリーの半生は、朝ドラ「おしん」より悲惨で、夫に文句を言うなんてことは思いつきもしなかった。しかし、ソフィアやシュグの男に負けぬたくましさに大いに触発されていく。男は女が本当に強くなると困るから、女を抑圧してきたのかもしれない。音楽も奴隷が屈辱を耐え忍び来世に希望を託した静かな黒人霊歌の時代から、神を讃え生きる喜びを身体全体でエネルギッシュに表現するリズミカルなゴスペル音楽の時代へと移っていった。自由を諦め来世での幸せを待ち望んでいた女が、この世にも希望があることを知り、自立へ向けて立ち上がる。ユーモアたっぷりに辛さを吹き飛ばすパワフルな社会派ミュージカル。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞

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