
(C)ツインエンジン
DVD \8,000(税抜)2024/12/18発売:バップ

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2024年製作 日 (89 min)
監督:中村健治
出演者:
(声)神谷浩史、黒沢ともよ、悠木碧、花澤香菜、小山茉美、戸松遥、他
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あらすじ:“大奥”とは、世を統べる“天子様”の世継ぎを産むために美女・才女たちが集められた“女の園”であると同時に、重要な官僚機構でもある特別な場所。 大奥の新人女中となったアサとカメは、大奥で信仰される“御水様”に「自分の大切なもの」を捧げる“儀式”に参加し、与えられた職務に励むことに。 そんな時、謎の男“薬売り”が、モノノ怪を追って大奥へ入り込む…。 アニメーション。
キャラクターデザイン:永田狐子 アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一 主題歌:アイナ・ジ・エンド『Love Sick』
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女たちが自分でも気づかないまま捨て去ってきた情念がアヤカシを通して見えてくる、摩訶不思議な物語。 絢爛豪華な極彩色の世界に心を奪われます。
≪モノノ怪≫シリーズ 『劇場版モノノ怪 第一章 唐傘』、『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』
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<スタッフ厳選 超お薦め映画作品!>
★★★★
今年4月に東京ドームシティ内のIMM THEATERで、舞台『モノノ怪~座敷童子~』を観た。役者も装置や照明もストーリーも全てが予想以上に素晴らしく、色彩の豊かさにのみ込まれた。悲しみと暗黒さを秘めた複雑なストーリーと、スピーディーな展開も気に入って、舞台の続編も、原作アニメの劇場版(本作)も是非観たいと思った。劇場に小学生が来ていたので少々気になり「お話わかった? 面白かった?」と聞いてみたところ、「面白かったでーす!」とニコニコ返事してくれたので、子どもの理解力をナメちゃいかんと反省した。
さて、本作はフジテレビ「ノイタミナ」枠(深夜枠)のアニメ「怪~ayakashi~」の一編「化猫」から派生した「モノノ怪」シリーズの劇場版アニメ。主人公は、大きな背負子(薬箱)を背負った薬売り(声:神谷浩史)。彼はモノノ怪を斬り祓う力がある「退魔の剣」を持っているが、『この剣は「形」「真」「理」の三様を得なければ封印を解き、戦闘用の体「神儀(しんぎ)」へと憑依することはできない。(1)形(かたち)とは「モノノ怪となりし妖(アヤカシ)の名」、(2)真(まこと)とは「事の有様」、(3)理(ことわり)とは「心の有様」。』のだという。つまり、モノノ怪の正体と出没する訳を理解していないと、モノノ怪を退治することは出来ないのだ。関係者から状況を詳しく聞く必要があるが、薬売りの「事情聴取」はかなりしつこくて、ごまかしがきかない。薬売りは今回、モノノ怪の気配を感じて「大奥」にたどり着いた。彼自体が謎めいた存在で、全てを知り尽くしているような怪しさを秘めている。
ちょうどその頃、アサ(声:黒沢ともよ)とカメ(声:悠木碧)は新人女中になった。2人は大奥で信仰される“御水様”に「自分の大切なもの」を捧げる“儀式”を経て、上役から職務を割り振られた。アサは才気活発な野心家で、遠慮せぬ物言いが御年寄の歌山(小山茉美)に気に入られ順調に出世してゆく。カメは長い物には巻かれるタイプで、大人しく素直に従う雑用係。大奥ではこのところ何か表(男性が治める幕府側)には言えない事件があったようで、大事な行事が先送りされてしまっていた。秘密が多すぎて息苦しいが、誰にも聞けない雰囲気。唐傘がカラカラと回るような異音がして、理性を失う女中も出始める。これがモノノ怪の音なのか? モノノ怪の正体とは…?
ここで言う大奥は、通常イメージされるものと少々異なっていて、世を統べる“天子様”(登場しないが)の世継ぎを産むために美女・才女を集めた“女の園”であると同時に、官僚機構でもあるという。つまり、女性が政治に参画し、公文書作成や行事も取り仕切っている。「御年寄」「御中臈」「表使」「御祐筆」「御次」「御三之間」という役職名の奥女中たちが、会社の社長、専務、役員、部長、課長、係長、平社員のような階級ピラミッドを形成している。彼女たちはこれまでの「大切なもの」や、自由、娘らしい心までをも捨て去って、大奥という世界だけで生きていかねばならない。
絢爛豪華な極彩色の世界に心を奪われる、時代劇ファンタジー。クライマックスではスクリーンいっぱいにイナズマのような衝撃が走り、目が追いつかないほど。とにかく絵が美しい! 女たちが自分でも気づかないまま捨て去ってきた情念がアヤカシを通して見えてくる、摩訶不思議なアニメーション。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
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