在りし日の歌 : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

在りし日の歌

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原題：地久天長／SO LONG, MY SON

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(C)Dongchun Films Production
DVD \4,800(税抜)2020/10/30発売：ビターズ・エンド／発売：紀伊國屋書店

2019年製作中国　（185 min）

監督：ワン・シャオシュアイ
出演者：
ワン・ジンチュン　見えない目撃者　薄氷の殺人
ヨン・メイ　海洋天堂
アイ・リーヤー　麻花＜マーホア＞売りの女

チー・シー、ワン・ユエン、ドゥー・ジャン、シュー・チョン

あらすじ：1986年、中国の地方都市。　国有企業の工場で働く夫ヤオジュンと妻リーユンには息子シンが、工場仲間の夫インミンと妻ハイイエンにはシンと同い年の息子ハオがいた。　両家は家族同然の付き合いをしていたが、シンは水難事故で亡くなってしまう。　新天地で暮らすことにしたヤオジュンとリーユンは養子にシンと名付け育てるが、16歳になったシンは反抗期を迎える…。　社会派ヒューマンドラマ。

ベルリン国際映画祭最優秀男優賞・女優賞、他多数受賞

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同じ工場で働き、同じ宿舎で暮らし、子どもたちは兄弟同然。　そんな親しい付き合いをしていた仲間たちも、様々な理由でバラバラに。　夫婦、友人、家族の30年が交錯する物語です。　人口の爆発的増加を抑えるために行われた中国の「一人っ子政策」がもたらした悲劇を描いています。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★
新型コロナウイルスは中国の武漢周辺地域で患者が相次いで見つかり、あっという間に世界中に拡がった。発生源については未確認情報やデマが駆け巡っており、まだよく分からない。日本でも外出自粛が喚起され、映画の公開延期も相次いでいるが、私は気を付けつつも概ね普段通りの生活を送っている。コロナの影響で例年よりPM2.5が少ないせいか、マスクを真面目に付けていたお蔭か、この2020年春はアレルギー鼻炎の症状がいつもより軽くてビックリしている。

コロナの感染爆発で注目を集めた中国は、ちょっと前までは人口爆発の国という印象だった。中国建国の父と言われる毛沢東（1893～1976）は、国力増強のために「産めよ、増やせよ」の「人口増加政策（主に1950～60年代）」を行っていたという。昔の日本と同じで、とにかく大勢の働き手が欲しかったのだ。中絶などトンデモナイことだったらしい。しかし、政策が功を奏しすぎて、今度は人口が爆発的に増えてしまった！　人口を支えきれない危機を感じた政府が次に行ったのが、これまでとは正反対の「ひとりっ子政策（1979～2015）」。近年は増やされた老人層を支えるべき若年層が足りないという危機に陥ってしまい、2人目の出産が認められるようになったが、それまでは非合法の2人目には戸籍も与えられなかったというから徹底している。今後も人口政策はどう変わるか分からない。しかしこのような国だからこそ、今回の「武漢封鎖措置」も可能だったのだろう。

さて、本作は1980年代から2010年代の中国が舞台。国有企業の工場で働く夫ヤオジュン（ワン・ジンチュン）と妻リーユン（ヨン・メイ）は、2人目の子を無理やり中絶させられた後、ひとり息子シンを水難事故で亡くしてしまう。夫妻は新天地へ移り養子を迎え、死んだ息子と同じシンと名付け育てるが16歳になった養子（ワン・ユエン）は反抗期を迎える。この男の子はどこかの2人目3人目の無戸籍児か、孤児だったのかもしれない。そうでなければ貴重な跡継ぎ男子を養子に出すはずがない。

夫妻に中絶を強制したのは、家族ぐるみの付き合いをしていた工場仲間の女性ハイイエン（アイ・リーヤー）で、彼女には夫インミン（シュー・チョン）と、シンと同い年の息子ハオ（ドゥー・ジャン）がいた。詳細は本編を見て頂きたいが、両家の間には、まるで前世からの因縁のような複雑な絡みがあり、主人公ヤオジュンがつくづく気の毒に思えてくる。

同じ工場で働き、同じ宿舎で暮らし、子どもたちは兄弟同然。そんな親しい付き合いをしていた仲間たちも、様々な理由でバラバラになっていく。夫婦、友人、家族の30年が交錯する物語だけに長い（185分！）が、中国の事情も理解しやすい。真面目で善良な人々が被った悲劇を描いた社会派ヒューマンドラマ。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

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