逆火 : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

逆火(ぎゃっか)

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7月11日より全国公開中

2025年製作日　（108 min）

監督：内田英治　異動辞令は音楽隊！　ミッドナイトスワン　サイレントラブ　マッチング
出演者：
北村有起哉　長州ファイブ　太陽の蓋　ヤクザと家族 The Family 　探偵マリコの生涯で一番悲惨な日
円井わん　MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない　 KONTORA コントラ　バジーノイズ　君の忘れ方
岩崎う大(かもめんたる) 　リスタート

大山真絵子、中心愛、片岡礼子、辻凪子

あらすじ：映画監督を夢見る中年の助監督・野島の次の仕事は、貧困のヤングケアラーでありながらも成功したARISAの自伝小説の映画化であった。　ところが周辺で話を聞くうちに、彼女に“ある疑惑”が浮かび上がる。　映画化への不安を募らせる野島の報告を受けても、監督やプロデューサーをはじめとするスタッフ全員が、今さら中止するわけにはいかないと言うのだった…。　　ヒューマン・サスペンス。　≪この女は、悲劇のヒロインか、それとも犯罪者か？≫　PG-12

脚本：まなべゆきこ

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もしARISAの過去がウソだったら、原作が作り話だったら、そんな映画を作って良いのか？　「社会的弱者に寄り添う」という製作意図の根本を揺るがす大問題ですが、クランクインまであと2週間しかない！　果たして、野島が下した決断とは？　「感動作品」を取り巻く、大人の事情が描かれます。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★
実話を基にした本が原作のテレビドラマや映画は多い。小説の時点で、悪気はなくても原作者が記憶違いや勘違いをしていたり、多少話を盛ったり、都合の悪い話が省かれている場合がある。その映像化となると、更に追加・削除する部分が大きくなる。たとえ全くのドキュメンタリーであっても、カメラの向きで印象は変わるもの。とはいえ、映像を見ると全てが事実のように誤解されがちだ。

本作の主人公は、中年の映画助監督・野島浩介（北村有起哉）。監督になる夢を追い続けているが、助監督は何でも屋なので多忙。従順だが疲れ気味の派遣社員の妻・幸（大山真絵子）とは、不仲ではないものの会話は少ない。高校生の一人娘・光（中心愛）は反抗的で帰宅が遅く、夫婦の頭痛の種。

野島が今関わっているのは、かつては貧困家庭のヤングケアラー（家事や家族の世話を担っている子ども）で、現在は実業家として成功している女性ARISAこと小原有紗（円井わん）の体験記を元にした映画。
ARISAの周辺を取材していた野島は、体験記にかなりのウソが含まれていることを知ってしまう。

このような映画の製作意図は、ヤングケアラーの存在を世に知らしめ、社会的弱者に寄り添い、同じ境遇にあるヤングケアラーに勇気と希望を与えることであろう。しかし、原作がウソだったら、そんな映画を作って良いものか？　今はウソもホントも噂がすぐに広まるネット社会。事実と大幅に違うことがバレたら、関わった者全員が大きなダメージを受ける。中止か、延期か、脚本を変えるか、何らかの手を打たなければならない。

だが、クランクイン（撮影開始）まで、あと2週間しかない！　映画監督・大沢祥平（岩崎う大）は、事実はどうであれこの映画が世に出ること自体に意義があるとインテリ顔で説く。強気の映画プロデューサー・橘郁美（片岡礼子）は今さら中止にできないと言い、更に野島が“監督”になる日も近いとエサをチラつかせる。裏方のスタッフは皆、中止になれば収入減となるため大反対。野島も中止は避けたいが、出てくる出てくるARISAの疑惑。公開後のことが心配になってくる。

ARISAと比べれば、裕福ではなくとも明らかに恵まれた家庭で育った野島の娘・光。しかし、自分の世界しか知らない光が、そのことに気付くはずもない。父として、助監督として、一人の人間として苦悩する野島と、当時と今の本音を語るARISAの当事者としての描き方がリアルで、ストーリーにも演技にも引き込まれる。
実話ベースの映画の舞台裏と、「感動作品」を取り巻く大人の事情、すれ違う親と子の心理が描かれるヒューマンドラマ。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞