
(C)Stone Bench Films (c)Five Star Creations (c)Invenio Origin
配給:SPACEBOX

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2023年製作 インド (173 min)
監督:カールティク・スッバラージ
出演者:
ラーガヴァー・ローレンス
S・J・スーリヤー
ニミシャ・サジャヤン
グレート・インディアン・キッチン
ナヴィ―ン・チャンドラ
、サティヤン
、サンチャナー・ナタラージャン
、ヴィドゥ
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あらすじ:1970年代前半のマドラス(現在のインドのチェンナイ)。 警察官に採用されたばかりの男キルバイは、着任前に殺人事件に巻き込まれ、牢に繋がれてしまう。 彼は悪徳警視ラトナから、無罪放免・復職と引き換えにギャングの親分シーザーの暗殺を命じられた。 シーザーに近づくためキルバイは身分を偽り、西部劇が大好きなシーザーの主演映画の監督をすることに…。 アクション・コメディ。
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どっちを向いても悪者ばかり。 いったい誰が一番のワルなのか? 映画スターになりたいギャングがヒーローを目指す、ぶっ飛んだ笑いの中に風刺を盛り込んだ作品です。
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<スタッフ厳選 超お薦め映画作品!>
★★★★
象の歯が長ーく伸びた牙=象牙は、印鑑やアクセサリーの材料として人気がある。現在はワシントン条約(絶滅危惧種の野生動植物の国際取引に関する条約)で象牙の国際取引は原則禁止されており、流通しているのは禁止以前の在庫品か自然死した象のもの。その収益は野生動植物の保護にも使われている。しかし高額な象牙狙いの密猟者は絶えず、気候変動や安全な生息地の減少も重なって、アフリカゾウは絶滅の危機に瀕している。身を守るための進化なのか、牙のない象が生まれる異変まで生じているという。インドでは象は保護動物に指定されていて、ガネーシャというゾウの頭をした神様もいる。象は聖なる動物なのだ。
さて、舞台は1970年代前半のインド。警察官に採用されたばかりの男キルバイ(S・J・スーリヤー)は殺人犯と間違われて逮捕され、悪徳警視ラトナから無罪・復職と引き換えにギャングの親分シーザー(ラーガヴァー・ローレンス)の暗殺を命じられる。ラトナの兄ジェヤコディは、映画スターで次期州首相候補者。標的のシーザーは「ジガルタンダ極悪連合」のトップで、もう一人の州首相候補である政治家カールメーガムの手先だった。
キルバイは有名映画監督サタジット・レイの弟子だと身分を偽り、映画好きで自分の主演作を作ろうとしていたシーザーに近づく。見事採用され、映画監督“レイ先生”としてカメラマン役の相棒ドゥライ(サティヤン)と共に常にシーザーに同行し、暗殺の機会を窺うことにした。
シーザーの地元の村は象を大量に虐殺している最強最悪の密猟者シェッターニ(ヴィドゥ)と、警官の横暴に悩まされており、罪もなく囚われている村人も大勢いた。自分でシーザーを殺す勇気がないキルバイは、シェッターニを捕えればヒーローなれるとシーザーに危険な闘いをもちかける…というのが、少々込み入った潜入事情のあらましである。
警視ラトナ、ラトナの兄ジェヤコディ陣営、密猟者シェッターニの悪行と黒幕の存在は闇が深く、どこまでいっても根絶できないほどの絶望を感じさせる。ギャングのシーザーにも罪は数限りなくあるのだが、身重の妻マラヤラシ(ニミシャ・サジャヤン)からはろくでなし亭主扱いされているし、自分を映画スターだと勘違いしているところといい、なぜか憎めない。また、血を見ると気絶するほど小心者のキルバイが、映画監督としてのスイッチが入ると途端にカッコよく見えてくるのも面白い。少数民族と象の嘆きも聞こえてくるし、象と人の心が通じ合うシーンも見どころ。
本作はカールティク・スッバラージ監督の2014年ヒット作「ジガルタンダ」の関連作品だというが、ストーリー的な繋がりは少ないらしい。今や誰もがスマートフォンのカメラマンになりインターネットで映像を発信できる時代とはいえ、映画や映画館が持つ力もまだまだ捨てたものではないと思わせてくれる。世界一の映画大国インドでは、映画が社会へ及ぼす影響は他国よりずっと大きいのだろう。メッセージ性のある映画をどう受け止めるかは観客次第。感動はいいが、扇動は怖い。ギャング映画、スパイ映画、ネイチャー・スピリチュアル映画、社会派映画の要素があり、もちろん歌やダンスも楽しめる、盛りだくさんのアクション・コメディ。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
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