八犬伝 : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

八犬伝

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2023年製作日　（149 min）

監督：曽利文彦　ピンポン　あしたのジョー　ベクシル‐2077 日本鎖国‐ 　ICHI
出演者：
役所広司　笑の大学　パコと魔法の絵本　 Shall we ダンス？　ローレライ
内野聖陽　黒い家　春画先生　あかね空　アングリースクワッド公務員と7人の詐欺師近
土屋太鳳　累かさね　青空エール　ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦！ベリアル銀河帝国　マッチング

渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、水上恒司

あらすじ：江戸時代の人気作家・滝沢馬琴の新作「八犬伝」は、里見家にかけられた呪いを解くため、運命に導かれた八つの珠を持つ八人の剣士が壮絶な戦いに挑む物語。　構想中の物語を聞いた友人の絵師・葛飾北斎はたちまち夢中になり、馬琴の創作の刺激となる下絵を描いた。　物語は異例の長期連載となるが、クライマックスに差しかかった頃、執筆を続けることが困難になってしまう…。「八犬伝」完成秘話。

原作：山田風太郎『八犬伝上・下』

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「悪が蔓延る世の中だからこそ、物語の中だけでも勧善懲悪を貫く」という信念から生まれた、奇想天外な「八犬伝」の「虚」の世界と、滝沢馬琴の執筆生活の「実」の世界が交錯するストーリーです。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★★

「八犬伝」は、江戸時代後期の人気作家・滝沢馬琴：たきざわばきん【戯号は曲亭馬琴：きょくていばきん】（1767～1848年）が28年の歳月（1814～1842年）をかけて執筆した、全98巻、106冊という超大作。私は子供の頃にダイジェスト版を読んだだけで、そんなに長い作品とは知らなかった。遅ればせながら本映画の原作となった山田風太郎作「八犬伝上・下」を読んだが、それだけでも結構長い。山田風太郎版は、八犬伝の物語＝「虚」の世界と、原作者・滝沢馬琴の私生活＝「実」の世界が交錯し、馬琴の人生と創作の意図を絡め、八犬伝への理解がより深まる構成となっている。

室町時代、今の千葉県にあたる安房国：あわのくに領主・里見義実（小木茂光）は、処刑した傾城の悪女・玉梓：たまずさ（栗山千明）から、「子々孫々に至るまで里見家を畜生道に落とす」という呪いをかけられてしまう。後年、義実が愛犬・八房：やつふさに「敵将の首を取ったら娘・伏姫：ふせひめ（土屋太鳳）を嫁にやる」と戯言を言ったところ、本当に犬は首を取ってきた。その後、八房と伏姫は命を落とし、伏姫の数珠から八つの球が八方へと飛び散り、やがてその珠を身に着け身体に牡丹の痣がある八人の若者が、里見家の呪いを解く八犬士と成長してゆくのが「八犬伝」のストーリー。

作者の滝沢馬琴（役所広司）は、執筆生活に専念するために結婚した妻・お百：おひゃく（寺島しのぶ）の口の悪さに悩まされている。元武士のプライドを終生捨てなかった彼の願いは、息子・鎮五郎：しずごろう（磯村勇斗）が医者なることをきっかけに、町人から武家に返り咲くことだった。馬琴の創作意欲を掻き立てるミューズ（？）となったのは、美女ではなく浮世絵師の葛飾北斎：かつしかほくさい（内野聖陽）だった。構想段階の八犬伝の内容を聞いてサラサラと即興画を描き馬琴を喜ばせるが、挿絵には使わせず即座に破り捨ててしまう。他にも歌舞伎・狂言の戯作者・鶴屋南北：つるやなんぼく（立川談春）や、武士で画家の渡辺崋山：わたなべかざん（大貫勇輔）など、同時代の文化人が登場する。

気位が高く引き籠りがちで家族に構いすぎる頑固者・馬琴と、家族のことはほったらかしで旅に出る飄々とした自由人・北斎。対照的な二人の父親としての姿も描かれ、時にホロリとさせられる。江戸時代には「家」や「義」が重んじられたが、実際の世の中は今と同じく欲にまみれていた。「建前」と「本音」を区別する線引きが出来ない現実世界に身を置きながらも、「虚」の世界「八犬伝」では勧善懲悪の「理想」を貫き通した馬琴。彼の「実」生活は、若い頃に思い描いた「理想」とは程遠いものだったが、戯作者としては後世に残る大作を書き上げたのである。

劇中劇の時間配分はおよそ半分で、「八犬伝」の見どころを分かりやすくまとめている。八犬士である犬塚信乃（渡邊圭祐）、犬川荘助（鈴木仁）、犬坂毛野（板垣李光人）、犬飼現八（水上恒司）、犬村大角（松岡広大）、犬田小文吾（佳久創）、犬江親兵衛（藤岡真威人）、犬山道節（上杉柊平）は、誰もが好青年で剣の達人。伏姫と信乃の幼馴染・浜路：はまじ（河合優実）は純情可憐。玉梓は執念深く恐ろしい妖婦だが、領主・里見義実にも隙があった。

八犬伝「虚」の世界のクライマックスは、終盤の迫力ある犬士たちの戦いの場面。そして馬琴が生きる「実」の世界のクライマックスは、息子の嫁・お路：おみち（黒木華）が舅・馬琴のために健気に頑張る場面だろう。「八犬伝」が完結するまでの28年の「実」世界に、無いようでちゃんと存在していた「奇跡」と「義」を描く物語。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞

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