第9地区 : 象のロケット≪映画DVD総合ナビゲーター≫

第9地区

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原題：DISTRICT 9

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2009年製作米　（111 min）

監督：ニール・ブロムカンプ　チャッピー　グランツーリスモ　エリジウム
出演者：
シャールト・コプリー　チャッピー　モンキーマン公　ハードコア　ビースト
デヴィッド・ジェームズ
ジェイソン・コープ

ヴァネッサ・ハイウッド

あらすじ：28年前、南アフリカ共和国上空に正体不明の宇宙船が現れた。　乗っていたのは弱り果てた“難民”たち。　以来、ヨハネスブルグ“第9地区”仮設住宅に住まわされることになった“彼ら”と市民の争いは絶えず、超国家機関MNUは彼らの郊外“第10地区”への移住を計画する。　しかし、立ち退き交渉責任者のヴィカスが、ある日、謎のウィルスに感染してしまう…。　SFサスペンス。

アカデミー賞作品賞ノミネート、シカゴ映画批評家協会賞有望監督賞、ブルーリボン賞外国作品賞、他多数受賞

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甲殻類に似ているため、「エビ」という蔑称で呼ばれ、キャットフードが大好きで、言葉が通じず、野蛮で不潔な“彼ら”は、地域住民から蔑まれる厄介者。　スラムと化した“第9地区”で熱心にゴミ漁りをする“彼ら”の真の目的とは？　感染したヴィカスは一体どうなってしまうのか？　実にユニークで風刺の効いた作品です。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★★
南アフリカ共和国と聞いて思い出すのは“アパルトヘイト（人種隔離政策）”だが、ここで差別されるのは黒人ではなく宇宙からやってきた“彼ら”＝エイリアン難民。ヌルヌルした不気味な2本足の“エビ野郎”と蔑まれている。

追い払う術もなく対処に困った政府は、大量の“彼ら”を“第9地区”の仮設住宅、いわゆる難民キャンプに隔離する。ヨハネスブルグ市内には、「FOR HUMANS ONLY（人間専用）」「NO HUMANS ALLOWED（人間は入っちゃダメ）」などの差別的看板が立ち並ぶ。冒頭から、お茶目で皮肉たっぷりだ。

しかし、“彼ら”は見かけによらない。あんな巨大宇宙船に乗ってやって来たのだ。ゴミあさりには、ちゃーんとした理由があった！

“彼ら”の大好物はキャットフード。地球へ来る前は一体どんな食生活を送っていたのだろう？　もっと不思議なのが、“彼ら”を相手にする人間の売春婦がいること。やわ肌の美女と甲殻類が一体どうやってコトをいたすのか、ちゃんと説明して欲しかったのは私だけだろうか？

さて、“彼ら”を更に劣悪な環境の“第10地区”へ移動させる交渉役だったヴィカスは、恐ろしいウィルスに感染してしまう。妻の父は早々に婿を見捨て、彼の人体実験に同意する。妻は父から聞かされた嘘を信じてしまう（この嘘に爆笑）。人類の誰もがヴィカスを助けようとはしない。ここで不本意ながら手を差し伸べるのが、クリストファーという“彼ら”だった。

ヴィカスは平凡な白人男で、助けは借りても“彼ら”と自分が対等だとは思っていない。クリストファーの方は、地球や人間の事など眼中にない。難民キャンプは仮の宿。一刻も早く祖国へ帰りたいと、そればかりを切に願っている。

“彼ら”の子どもも一見グロテスクだが、無邪気に話しているのを見るうちに、だんだん可愛くなってくる。高度な能力も持っている。理解は融和へと意識を変え、“彼ら”とヴィカスをこれでもかと力で追い詰める人類の方がずっと醜く見えてくるのだ。

ところで、日本にも1981年以降、インドシナ（ベトナム・ラオス・カンボジア）、ミャンマーなどから1万人以上の難民が命からがらたどり着いている。その後これら難民問題についての報道は少なく、私たちの関心は低い。むしろ海外からの出稼ぎ労働者、不法滞在者などの方が身近な存在だが、彼らの中にも実は難民が含まれている。

日本で難民と言うと、外国人ではなく、ネットカフェ難民やホームレスのことが頭に浮かぶかもしれない。さまよう日本人難民を救うのが先だと考えられているのは、この不況下では無理もない。いずれにしろ、難民問題は遠い国の話ではないのである。

自分たちとちょっと違う理解できない存在は、一方では崇められ、一方では蔑まれ、良きにつけ悪しきにつけ遠ざけられて来た。排他的意識や差別が世の中にある限り、“第9地区”はどんなところにも存在していると言えるだろう。

しかし作品中には、そんな興醒めするような理屈っぽいメッセージは一切ないのでご安心を。

「もしも、何百万人もの宇宙人が難民としてやってきたら？」という独創的なストーリーと、リアリティのある映像で、南アフリカ出身の監督がユニークな作品を作り上げた。ワクワクする展開でアクションシーンも見ごたえあり。風刺は利いているが笑いに嫌みがないスマートな社会派SFドラマ。続編“第10地区”製作も期待される、お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞

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