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原題：EIN GANZES LEBEN／A WHOLE LIFE

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7月12日より全国順次公開中

2023年製作独・オーストリア　（115 min）

監督：ハンス・シュタインビッヒラー
出演者：
シュテファン・ゴルスキー
アウグスト・ツィルナー　生きうつしのプリマ
イヴァン・グスタフィク

アンドレアス・ルスト、ユリア・フランツ・リヒター、ロバート・スタッドローバー、トーマス・シューベルト

あらすじ：1900年頃のオーストリア・アルプス。　孤児の少年アンドレアス・エッガーは、渓谷に住む遠い親戚が営む農場に引き取られるが、安価な働き手として虐げられる毎日を送ることに。　成長し農場を出たエッガーは、ロープウェーの建設作業員をしている時にマリーと出会い結婚。　しかし、幸せな時間は長く続かなかった。　…第二次世界大戦が勃発し、エッガーも召集されることに…。　ヒューマンドラマ。

バイエルン映画祭主演男優賞　原作：ローベルト・ゼーターラー　脚本：ウルリッヒ・リマー

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誰の人生も波乱万丈。　エッガーの人生のほとんどは孤独でしたが、中にはいいことだってあったのです。　美しいアルプスの渓谷を背景に、必死に生き抜いた男の生涯が描かれます。　まるで人生の指南書のような、胸に染み入るストーリーです。

＜スタッフ厳選超お薦め映画作品！＞
★★★★★

　
時は1900年頃のオーストリア。主人公は孤児の少年アンドレアス・エッガー（少年期：イヴァン・グスタフィク、青年期：シュテファン・ゴルスキー、老年期：アウグスト・ツィルナー）。彼はアルプスの渓谷で農場を営む遠い親戚クランツシュトッカー（アンドレアス・ルスト）に引き取られた。子どもへの配慮や優しさの欠片もない農場主にこき使われ虐げられながら育ち、成長して農場を抜け出すと日雇い労働を経て、ロープウェーの建設作業員になった。第二次世界大戦時には召集され、戦地で大変な目にも遭う。

雄大で美しく時に残酷な顔も見せるアルプスの渓谷にある町を舞台に描かれる、市井の労働者エッガーの生涯。雪山で命を落とす者や怪我をした者と彼が関わる場面からは、原作者の死生観が感じられる。どんな人の人生だって波乱万丈だが、何度も苦難に見舞われる孤高の男エッガーのつぶやきには、まるで人生の指南書のような重みがあった。

身体が大きく頑丈なエッガーは、幼少期からの足の不自由さを感じさせない働きぶりで重宝される。渓谷は観光地として賑わいつつあり、仕事口には困らない。貧しく育った彼は贅沢とは無縁で余計なものは欲しがらず、必要最小限のもので満足している。現代風に言うならミニマリスト。彼が暮らす質素な部屋が、理想の家に見えてくる。

3人の女性が登場する。少年期には農場で幼いエッガーに文字を教え心の支えとなった老婆（マリアンネ・ゼーゲブレヒト）、青年期には押しの一手と素敵なプロポーズで射止めた妻マリー（ユリア・フランツ・リヒター）、老年期にはほのぼのとしたデートを重ねる教師ホラー（マリア・ホーフステッター）。働き詰めの彼の人生にも、多少の彩りがあり、夢や希望もあった。エッガーが手紙を書き続ける姿は涙を誘う。恋愛においてもミニマリストである彼は、安易な妥協はしない。実は大変なロマンチストだった！

愛や孤独がどんなものかは人それぞれで、求める愛の形や大きさ、耐えられる孤独や絶望のレベルも違う。エッガーはささやかながら十分な「幸福と愛」を得た経験があったからこそ、その後の「絶望と孤独」にも耐えられたのだろう。誰にでもできることではない。愛する人との思い出を胸に抱き、絶望しても自殺せず、辛くても腐らず、淡々・堂々と生き抜いた、ある強い男の一生を、ぜひ映画館で追体験して頂きたい。お薦め作品だ。

（象のロケット映画・ビデオ部　並木）

＜作品評価システム＞と＜高度マッチングシステム＞