サイの季節:作品を観た感想(5)

サイの季節
詩人サデッグ・キャマンガールの実際の体験を基にした映画なのですが、馬のまぶたや、降る亀、そしてサイが登場する彼の詩は、ドラマを牽引するように挿入され、暗喩に満ちた哀しみが強く伝わってくる。この詩に導かれ心象風景が映し出される。イランやトルコを舞台にした大人向けの政治色の強い芸術路線の人間ドラマで、詳しいわかりやすい説明は一切なし。彼の心境を想像していくのがこの映画の醍醐味なのかもしれませんね。
いやいやえん
2016年6月7日

『サイの季節』をギンレイホールで観て
画面だけ大胆でこんな淡々と進んでいいのかという違和感が残った。高倉健のような沈黙の美学と言うのもあると思うが、これほどの過酷な運命に対する対応としては、全てを引っ繰り返す菅原文太のような激昂が欲しかった。
ふじき78の死屍累々映画日記
2015年12月16日

『サイの季節』の誌的幻想
モニカ・ベルッチがヒジャブを被り、白髪の入り混じったイラン女性になりきっている。
Days of Books, Films
2015年7月20日

『サイの季節』 詩人が示す沈黙
監督のバフマン・ゴバディは、沈黙を表情のクローズアップと背景のコントラストで示す。何げないシーンのようで妙に印象深いのは、近景と遠景の差異を意識させる画面づくりがなされているからだろうか。車のフロントガラス越しに視線の先にあるミナの家を眺める様子は胸に迫ってくるものがあるし、黒い海が広がる手前で白い波しぶきが上がったりもする場面は鮮烈だった。時代に翻弄されるふたりの物語はわかりやすいが、動物たちが登場してくるエピソードはその意味を掴みかねる部分もある。サヘルが詩に詠んでいたサイの姿も登場するのだが、この場面は現実なのか彼の詩のイメージなのかは曖昧だ。
映画批評的妄想覚え書き/日々是口実
2015年7月18日

サイの季節・・・・・評価額1750円
★★★★ 実際に四半世紀もの間囚われていた、詩人のサデッグ・キャマンガールの実話が元になっていて、リアルな人間ドラマと、キャマンガールの詩に由来するファンタジックな比喩表現が混在するユニークな世界観が特徴だ。ゴバディの真骨頂とも言うべき、マジカルで圧倒的に美しいビジュアル。シネマスコープのワイドな視野の中で奥行感を最大限生かし、凝りに凝った空間演出が見事だ。瞳に底なしの孤独を湛え、深い皺に人生の悲喜を感じさせる、べへルーズ・ウォスギーが素晴らしい。妻のミナ役をイタリア人のモニカ・ベルッチが演じてるのが意外だが、黒髪のエキゾチックな風貌は、ペルシャ美人役に違和感ゼロ。
ノラネコの呑んで観るシネマ
2015年7月9日

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