戦場でワルツを:作品を観た感想(21)
戦場でワルツを
ドキュメンタリーとアニメーション。この合う事が全くないものを映画化した意欲的で斬新な作品だ。幻想的な絵に引き込まれ、ミステリアスな部分もあり魅入ってしまう。アニメーションにした事で、戦争映画の重く圧し掛かるような独自の空気が和らいでいて見易くなっているが「パレスチナ難民」や「サブラ・シャティーラ大虐殺」を知らないと分かり難い作品ではある。この作品のようなドキュメンタリーとアニメーション、そしてエンターテイメント性もある本作が一般人にも分かりやすいのではなかろうか?なので「重いから」と避けずに是非とも見て欲しい。
元レンタルビデオ屋店長の映画感想
2010年6月17日
戦場でワルツを
アニメでもCGでもなく、、兎に角不思議。作者の実体験というドキュメント形式のノンフィクション。どうしても思い出せない自分の記憶をたどりながら、イスラエルで起きた事実を一つずつ思い出していく…。彼は記憶から消し去った出来事を本当に思い出したいのか? ストーリーが進むにつれてそんな思いが湧いてきます。淡々としたアリの記憶の旅と、かつて仲間として同じ地で戦った友人のリアルな語り。戦争の歴史をひも解くと必ずと言っていいほど許しがたい出来事に遭遇するような気がしてしまう。ラストは耐え難いほどの惨状…十分な映像であり作品だと思いました。
ひばなのシネマの天地
2010年5月27日
戦場でワルツを
出てくる話のひとつひとつが心の痛くなるような戦争体験ばかり。仲間に見捨てられて一晩海を泳いだ話、狂気で機関銃を撃ち続けて関係ない一家を殺した話。映画のタイトルの元になった体験も恐怖がどんな狂気に陥らせるかを伝えてくれます。でも、最後に登場した1982年にレバノンで起きた難民への大虐殺はあまりにも悲惨で哀し過ぎる出来事でした。監督自身が自分の記憶と共に、大虐殺の事実を突き詰めていこうとした行動力と、分かったことを映画で表現しようとした勇気には感服です。体験者が監督だからこそ、この作品が創り出せたのだと感じました。
とりあえず、コメントです
2010年4月25日
『戦場でワルツを』
実写をトレースしたのではと思わせるほど写実的な画。その斬新なアニメーション手法による奥行きや陰影の深みが魅せる力強さの巧妙。しかし本作のテーマの重みがそんな一瞬の浮遊感を一蹴する。記憶の臨場感、とでも言おうか。あくまで暗色なトーンはどこまでも確かな質量を与える。ジャンルとしてはホロコースト映画ということにもなる。戦争の醜悪に対する風刺であり、フォルマンのいち個人としての謝罪のようでもあり。もちろん、加害者側の視点で描かれた史実でもある。また「記憶」にまつわるエピソードが複数おりこまれていてこれが実に興味深い。
シネマな時間に考察を。
2010年4月15日
『戦場でワルツを』 (2009)
「戦争の怖さ」という大雑把な書き方をしてしまったけれど、つまるところ人間の怖さを描いているわけで、人間は、戦争の真っ只中では、ここまで怖い生き物になれるんだということに、驚きます。アニメーションの技術とか、作品の出来とか、そういった事を考えること自体、ちょっと後ろめたさを感じるほどに、この作品にはインパクトがあるように思います。当分、戦争映画は見たくないなあ、というのが今の気持ちです。
よーじっくのここちいい空間
2010年2月5日
「戦場でワルツを」と「フルメタル・ジャケット」
[フルメタル・ジャケット]は、戦争に行くということは「個人というものを捨て去ること」であり、その結果「殺人マシン」になるということだということを明確に描いた作品。本作もまた、戦場で「個人を喪失せざるを得なかった」体験を語る作品である。この2作品には共通したものがあるようだ。ここには「愛する者を守るために戦いに行く」という欺瞞に満ちたものはない。
映画と出会う・世界が変わる
2010年2月1日
「戦場でワルツを」に感じる「美」とは何だろうか?
本作の一場面、一場面に美を感じた。しかし、描かれていることは悲惨であり、醜悪なことである。そこには美などというものは決して当てはまらない。それでも、そこに「美」を感じるということは、映画というフィルターを通すことによって、対象の真の姿や状況が変化すると言えるのではなかろうか。それとも「美」というものが、あらゆるものを超越した概念というべきなのか?このことは映画というものを考える上で非常に重要なことではなかろうか。
映画と出会う・世界が変わる
2010年2月1日
「戦場でワルツを」が「おくりびと」に負けた理由はよく判る
本作と[おくりびと]とはアカデミー外国語映画賞を争った作品。結果としては[おくりびと]が受賞したのであるが、私は納得である。[おくりびと]が優れていると言っているのではない。映画としては断然に[戦場でワルツを]が内容もテーマも衝撃力はあり、これこそ世界中で見られるべき作品だと思う。だからこそ、戦争を行っている国としては、この映画から遠ざかりたかったのではなかろうか? 人畜無害、癒し系の[おくりびと]が受賞するのは当然であろう。
映画と出会う・世界が変わる
2010年1月26日
「戦場でワルツを」 戦時下の虐殺事件は起きて当然ということ
人は戦場に送られたときにどのようになるのだろうか。敵とはいえ、個人的には憎しみの感情はまったくないそのような相手を平気で殺すことが出来るのであろうか。もちろん相手が襲ってくれば、そこには防衛本能により行動するであろうが、見知らぬ土地に行って、そこでいきなり殺意や憎悪を持つことが出来るのであろうか。本作では、戦争の要素である国家間の利害やイデオロギーを除外して、戦場に送りこまれた一人の人間がどのようになるのかを追求している。この映画は、戦争の現実を直視した極めて重要な作品である。
映画と出会う・世界が変わる
2010年1月25日
戦場でワルツを 何故、アニメなのか?
冒頭から画面にひきつけられ、アニメといいながらも非常に現実感があり、しかも訴える力の強さも感じられながらも、どうしてこの映画をアニメで作らねばならなかったのかという思いがつきまとっていった。もしかしたら奇をてらっただけなのかとか、そんな感想を持ちながら、一方では物語にショックを受けていた。そうした感想を吹き飛ばしたのはラストである。ラストの実写場面になって初めて戦争の現実の残酷さが迫ってくる。アニメで作られた物語ではなく、起きている「現実」が描かれくる。アニメで描かれているのはプロローグだった。
映画と出会う・世界が変わる
2010年1月24日
戦場でワルツを
★★★ このアニメーションですが、切り絵や貼り絵のような感覚でしょうか、観たままで状況を判断できるような色彩など、戦争映画としてはとても斬新だと思いました。幻想的な場面はアニメならではで、それが逆に戦争に携わった兵士たちの心理状態が、どんなに時を経ても過酷な現実として伝わってきました。イスラエルを取りまく政治や宗教の問題は複雑ですが、結局のところ、戦争の愚かさだけは十分に伝わりました。イスラエル人側から製作したのも大きな意味があるのだと思います。が、正直あまり映画としては好みではなかったです。
心のままに映画の風景
2010年1月10日
*戦場でワルツを*
人間の記憶ってあいまいで頼りないものですが、それは自己防衛機能とでもいうべきもの。この作品ではそこをあえて自分で掘り起こしていく、という作業をし、観客も彼と一緒にその旅に参加することに。カメラマンさんがファインダーを通して戦争に接しているときには戦場にいても客観的だったのに、ある光景を見てしまってからは、精神的にダメージを受けてしまったシーンが印象的でした。そんな映像の積み重ねの後のラスト…カメラマンさんと同じような体験を私たちはすることになり、それまで客観的だった痛みがダイレクトに襲ってきました。
Cartouche
2009年12月21日
「戦場でワルツを」 恐怖で歪む記憶と事実
本作におけるアニメーションという手法は、人間の「記憶」の不確かさ、そして人間が「事実」をどのように見ているかということを語っているような気がします。強い恐怖にさらされた思考停止状態は個人だけではなく、集団にも起こります。これは本作で描かれる虐殺を行ったファランへ党もそうだったのかもしれません。その恐怖は実体がないものかもしれませんが、恐怖を感じるものからすればそれは「真実」になってしまう。恐怖で歪んだレンズで見る世界も、アニメーションでなければ描けなかったかもしれません。ラストでいきなりの実写、これは「事実」です。
はらやんの映画徒然草
2009年12月20日
戦場でワルツを
★★★★戦争の理不尽さ、悲惨さなどは、独特の色調ともあいまって、こうしたアにメ映画の方がよく伝わるのかもしれないと思い、また制作国がイスラエルだという点、記憶のフラッシュバックから映画が始まるという点にも留意すべきだと思いました。
映画的・絵画的・音楽的
2009年12月17日
「戦場でワルツを」
ドキュメント映画です。手法は変わっていますけどバッチリとドキュメント映画です。「日本で戦争はもう起こらない」と思っている人には価値の低い作品ですが、それ以外の人は是非観てください。ある日、異国の兵に侵攻され、銃を突きつけられて塀に並ばされる可能性がなくはない思うと相当に考えさせられます。逆に異国へ駆り出されて、並ぶ他国の人を「撃て」と命令される身に置かれたらと想像すると、より意義のある作品だと思います。
クマの巣
2009年12月14日
戦場でワルツを・・・・・評価額1700円
★★★★ 果たして当時19歳の新兵だったフォルマンは一体そこで何を見たのか。フィクションではない現実の人間の心理の奥底を表現するのに、物事の本質を映像的なメタファーとして表現できるアニメーションは、実は非常に有効な手法。当時を知る者たちへのインタビューを通して、少しずつ記憶を取り戻したフォルマンは、ついに虐殺当日の記憶に向き合う事になり、ここで映画はアニメーションから実写に切り替わる。それまでドキュメンタリーとは言っても、アニメーションというイメージの世界を観ていた観客へのインパクトは絶大だ。
ノラネコの呑んで観るシネマ
2009年12月2日
戦場でワルツを
ドキュメンタリー映画だけど全編アニメーションで、戦争シーンも生々しく無い。しかし戦争の悲惨さ、特に戦争に駆り出された兵士たちの切なさが伝わってきました。台本は無く、監督自身の経験を戦友たちやジャーナリストの話を交えて作られてるので、当然リアリティがあり戦争とは?平和とは?改めて考えさせられました。こういったアニメの形のドキュメンタリーは珍しい感じがします。ラストにアニメから実際の映像に切り替わって、創作された話っぽかったこの作品に改めて真実であることを描いたように思いました。
Diarydiary!
2009年12月2日
戦場でワルツを
回想を表現する手段としてアニメーションを利用したという試み、これ自体は評価できると思いました。しかしただそれだけの作品でした。私はこの作品のアニメーションに"ホンモノ"を感じませんでした。むしろ、アニメーションにしたがために、現実に起こった真実から我々を遠ざけています。本作にはリアリティが希薄でした。この場合のリアリティとは単にあるがままという意味ではありません。見ている人の心にどれだけ真実味を抱かせるかという意味です。私の心の琴線に触れるものは何も無い作品でした。
LOVE Cinemas 調布
2009年12月1日
戦場でワルツを / VALS IM BASHIR/WALTZ WITH BASHIR
★★★ 曖昧な記憶を映像化するのに、アニメーションを用いてみせたアイディアが素晴らしい。ぽっかり空いてしまっている記憶の空洞を、自ら呼び起こして向き合って出来た本作。ラストシーンで、ここまでアニメーションで見せてきた意味が理解できた。突然、現実を突きつけられた!何も罪もない人々、子供までもが大量に命を奪われた、その真実は永遠に消えない。戦争以外でも、被害者、加害者が存在する醜い争い。ドキュメンタリー映画として初めてアニメーションでここまで描いた作品として、評価に値するべき映画だと思う。
我想一個人映画美的女人blog
2009年11月29日
戦場でワルツを
アニメーション・ドキュメンタリーという一風変わった映画。幻想的なシーンなどアニメーションだからこそ表現できるとこもあり、それなりに見ごたえある映画でした。ただ単調なんで眠かったです…。サブラ・シャティーラの虐殺のことを知りませんでした。ナチスのホロコーストの被害者だったユダヤ人がこの虐殺に間接的に手を貸していたことは衝撃でした。これが本当ならユダヤ人はナチスと同列で、ナチスをどうこう言える立場じゃないと思う。ラストの映像が衝撃的で、劇中で登場人物が証言していたどおりの写真が映し出され、何とも言えない気持ちになります。
だらだら無気力ブログ
2009年11月28日
戦場でワルツを
ガリルを 使い慣れたMAGに持ち替えた瞬間 そいつは踊り出した・・不思議なタッチのアニメーションだ。 太い線、濃い影・・動き出すとこれまたヌルッとした感じで、 一部は3Dなのか詳しくはわからないが、 去年めぼしい各賞のノミネートには上がっていた作品。 ともすればアニメとしては自虐的なスタンスではないだろうか。 しかし、 そうまでして訴えたかったものがあるのだろう。 ここは賛否両論を呼びそうな部分だが、 自分は"賛"である。 この作品自身は実話とは銘打っていないが、 監督の実体験に基づく、 心の実話なのだろう。
シネマ走り書き
2009年11月23日
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