ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ:作品を観た感想(21)

ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜(’09)
印象的だったのは、松たか子演じるヒロイン佐知が、家庭人としての誠意皆無で様々に苦労させられても、そういう弱さ情けなさも含めて、どうしても夫大谷を好きなのだという部分。それは原作より劇中の方が色濃く感じられました。原作では大谷に翻弄される愛人らしき存在として名が出るだけの秋子も、より生々しく、大谷と心中に走ったり、原作には登場しない弁護士辻と佐知の関わり等も、原作の筋からそう外れずドラマティックに味付け、という感じ。太宰治が自身を晒した作品ベースに、良くも悪くも生身の人間等身大の姿、の映像化、という感が。
Something Impressive(KYOKOV)
2010年7月3日

ヴィヨンの妻−桜桃とタンポポ□日活ロマンポルノのひとつの到達点
監督の根岸吉太郎と脚本の田中陽造といえば、日活ロマンポルノのエース。その二人が作った本作を見ると、この二人はもしかしたら、ロマンポルノ時代にこの作品を撮りたかったのではなかろうかということがひしひしと伝わってくる。ロマンポルノが切り開いたものが、あるいは、ロマンポルノで育った才能が、このような作品を生み出したことに感動を覚える。この作品は日活ロマンポルノのひとつの到達点といえるのかもしれない。それにしても[雪に願うこと]以降の根岸監督は、ある種の風格が感じられる。
映画と出会う・世界が変わる
2009年11月17日

『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』 (2009)
かなり身勝手でいい加減で、責任感があるのかないのか、つかみ所がない主人公と、運命のように振り回されても寄り添う妻。存在自体が異性を惹きつけてやまないゆえに、流されていく男と女。この夫あってこそ、次第に輝き、凛として存在する妻。男は作家だけれど、才能って自分の意志とは別に、背負わされるものだから始末に悪い。褒めちぎる気にはなれないけれど、かなり行き着いたところに、あっさりと到達している「作品」のような気がする。
よーじっくのここちいい空間
2009年11月16日

☆「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」
★★★★ 愛人持ちで酒びたりで借金持ち作家だけど、そんな奴に限ってその妻は、けな気で働き者…しかも美人でモテモテ。ダメ夫もちょっと嫉妬気味・・って事で、ますます酒と女に走るのね。松たか子は現代劇より時代劇や昭和初期みたいな時代もののほうが似合うのかなーなんて思うし、キャストはみんないい味出してた。人間のダメダメ部分をどうするの??どうにもならないの??でも生きてくの??という苦悩が本筋にあるのかなー。太宰の作風が映像に上手く表現されてたと思いますねっ。
☆☆ひらりん的映画ブログ☆☆
2009年10月29日

*ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜*
いつも何かに脅え、死にも生にも恐怖を感じていた大谷。繊細であるということはこんなににも苦しいことで、こんなに自分のことも周りも苛めなければ生きていけないなんて、どういうことだったのでしょうか。そんな色々な疑問に応えは出てきません。でもふたりの最初の出会い。そして時折佐知にすがるように抱きつく大谷を見ていると、彼女は決して不幸ではなくどんなことがあっても佐知は彼を大きく包み込んでいくのだな〜。それが彼女の幸せなんだな〜と少し理解できたような気がしました。
Cartouche
2009年10月27日

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
一応最後まで飽きることなく観ることできました。だけど、イマイチのめり込めなかったというか、佐知がここまで大谷に尽くす理由が良く理解できませんでした。大谷の苦悩も良く解んなかったですし。観る前からこの映画は何となく自分に合わないかもと思っていたんですが、どうもそのとおりだったみたいです。ただキャスティングは良かったと思います。松たか子と浅野忠信以外に、椿屋の夫婦の伊武雅刀と室井滋なんかもとても良かったです。
だらだら無気力ブログ
2009年10月23日

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
★★★ 夫を支え続け、裏切られても、都合の悪い時だけ利用されていても、例え自分のプライドが崩れるようなことがあっても、前向きに生き続ける佐知の姿に芯の強さが窺えます。まさに「女は強し!」という言葉を象徴しており、その役柄を見事に演じきった松たか子にも素晴らしい女優で、敬意を表したいと思います。キャスティングも非常に良かったですね。店主の伊武雅刀や室井滋も非常にいい味を出しており、弁護士役を演じた堤真一は昭和の役がとても似合っている俳優だなと思いました。
必見!ミスターシネマの最新映画!
2009年10月19日

「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」私は産まれた時から、ずっと...
★★★★ 太宰そのものと思って見たが、どこまでが真実なのかは分からない、時代の空気や人々の活気などは新鮮だった。会話は小説から引用したような堅苦しい言い回しが多かったが、かえって時代物のような雰囲気を与えて悪くなかった。浅野忠信はあくまで浅野忠信で、ここでも演じているという感じはしない。しかし松たか子は良かった、彼女のための映画といっても良いだろう。理性的でありながらそれでも主人第一の絶対的な部分を強く持ち、一緒に生きていくだけで充分と切ない純愛をささげる。
soramove
2009年10月17日

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
★★★★ 松たか子はこの役柄がピッタリ。大胆な行動をとる佐知は凄く可愛く映ったし、活き活きと働く姿からは芯の強さが伝わってきました☆ 誰も自分を助けてくれない窮地の中で、唯一救いの手を差し伸べてくれて自分を理解してくれた大谷にずっと惹かれ続けているようにも観え、そう言う想いが全くぶれずに消えないって言うのは凄く羨ましい事だと思いました☆ 浅野さんに関しては、本当にダメダメな男なのに、母性というか怒りを通り越して優しさで守ってあげたくなる感じが伝わってきて、素晴らしかったです☆
Addict allcinema おすすめ映画レビュー
2009年10月17日

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
大谷と佐知夫婦、その周りの秋子や椿屋夫婦や佐知に惚れる岡田やかつて佐知が好きだった辻も絡んできて面白かったです。特に後半、大谷と心中事件を起こす秋子は少ない出番ながら印象的でした。小説家の大谷役の浅野さん、頬杖ついてるところなんてちょっと太宰 治に似てましたね。アンニュイな表情とかとっても良かったです。佐知役の松さん、今までそんなに意識して見た事が無かったですが今回とっても素晴らしいなと思いました。健気な感じとか気丈な感じ、一瞬一瞬の表情がとてっても素敵でした。
Diarydiary!
2009年10月16日

ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜
★★★ 泥棒、アル中、心中未遂など暗い雰囲気なのにユーモラスなのは、小説家の大谷(浅野忠信)の存在そのものがユーモラスだからだろう。こんな人に何言っても、通用しない。何でも自分の都合の良いように解釈するふりするから、盗もうが奪おうが「やっぱり好きなんだよな」で片付けられてしまいそうだ。佐知がそれでも献身的なのはひとえに太宰の身勝手な願望を反映したものに違いない。吉蔵が「病気」と言っていたが病気は感染するのだ。佐知も吉蔵夫婦も実は感染者なのだ。
佐藤秀の徒然幻視録
2009年10月15日

ヴィヨンの妻 -桜桃とタンポポ- (2009)
★★★★ これははまりました。映画で太宰治を読んでいるかのようで、地味ながら物凄く丁寧に作られた作品です。なんと言っても主演の浅野忠信と松たか子が良いですなぁ。ストーリー的には何かヤマがあるわけでもなく、最初から最後まで静かに淡々と進んでいくんですが、演出と脚本の妙といいましょうかw 少ない台詞の中、役者の演技だけでここまで魅せてくれた作品は久しぶりのような気がします。しかし男というものは弱く情けない生き物ですなぁ。いかに女の手のひらで旨く転がされているか良く判る。
肩ログ
2009年10月14日

【ヴィヨンの妻-桜桃とタンポポ-】
ダメな夫を静かに支えた妻というお話ではあるのですが、どうにも素敵には思えずで、全然入り込めませんでした。共感できなかったな〜。基本的にはこういうストーリは好きなのですが、想像していた夫婦像とかけ離れていたからかもしれません。登場するキャラ全て魅力がないような感じで。椿屋のご夫婦にしても、お金払わないならもうお酒出さなきゃいいのに。堤さん演じる元恋人もなんだかなーだったし、妻夫木くんとの家でのやり取りにも佐知に全く好感持てず。期待していただけにとっても残念な作品でした。
日々のつぶやき
2009年10月14日

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ
★★★ 主人公の佐知を演じた松たか子とその夫で作家の大谷を演じた浅野忠信の演技は実に味があり限られた言い回しのセリフ劇の中に個々の人物の心情を上手く表現していました。その可愛らしい顔とは裏腹に意外と大胆な行動をとる佐知、活き活きと働くその姿からは芯の強さが伝わってきます。秋子役の広末涼子ですが、結局最後までどうも馴染めませんでした。この作品、実際には大谷は太宰自身を投影した人物なのでしょうか。
LOVE Cinemas 調布
2009年10月13日

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜
妻は自分のしたことにある風、センシティブな態度もあるのが松たか子演じる映画の妻ではあるが、小説の妻の方はもちょっと肝っ玉妻なんじゃないかと。映画の中ではやはりさくらんぼを食べるところが印象深く、そこがこの映画のツボなんだろう。最も好演していたのは子役で何も出来ない子供、演技というのもない、というのが名演じゃないか。逆説的に弁護士のエピソードは浮いていたように思える。
しぇんて的風来坊ブログ
2009年10月12日

恋する気持ちの原点。『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』
★★★★ 警察に捕まった佐知を助ける為に大谷が起こした言動に損得勘定はなく、万引きをした彼女の心の根底にあるその想いをただ理解したからであって、工員のように結婚を迫る為でも、弁護士のように肉体関係を迫る為でもありません。綺麗で美しい未来予想図よりも自分の目の前で起きた小さな出来事をずっと大切にする彼女の想いは、恋する気持ちの原点のような気がします。相手に対する気持ちの根底に愛情がなければ、相手の言動を受け入れる事ってなかなか出来ないような気がするのです。
水曜日のシネマ日記
2009年10月12日

ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜
この夫婦がそれぞれいろんな人から愛されている。映画が進むにつれて、どんなにいろんな人から慕われても大谷と佐知それぞれの一番の理解者はやはり佐知と大谷であることが徐々に浮き彫りになっていく。終始静かで地味な演出ばかりでしたが、太宰治文学の死を求める苦しさと生を求める繊細さが混在しているという世界観を壊さない丁寧な演出は凄く好感の持てるものでしたね。やはり太宰文学は時代をどんなに超えて素晴らしい。特に現代にはその素晴らしさをより堪能できるのではないでしょうか。
めでぃあみっくす
2009年10月11日

【ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜】たんぽぽの花一輪の誠実もない
嫁いでは夫に従い、老いては子に従う。そんな教えの中で女性が生きていた時代の話。そう考えると、佐知さんと言う女性は当時としては結構革新的な考えの女性なのかも知れない。大谷と言う男は、ほぼ太宰治をそのまま投影した人物なのだろう。ストーリーとしては、のめり込める所はなく、、。上映中、笑う事もなく、ホロっとする事もなく、でも寝る事もなく、ただ見続けましたって感じ。純文学って芸術だから、映画もその通り、雰囲気を楽しめばいいんでしょう。
映画@見取り八段
2009年10月11日

ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜 / Villon 's Wife
★★★★ 良かった!主演ふたりが素晴らしい!その雰囲気と、太宰の独特なセリフまわしや言葉づかい。夫婦の会話なども、いちいち堪能してしまった。こんなに純粋で、男という弱い生き物をちゃんと理解した、理想的ともいえる女性。ありえないくらいダメダメ男なのに怒りをぶちまけたくならないのが不思議。この弱々しさ、色々なことへの恐怖心が怒り通り越して優しさで守ってあげたくなるのかもしれない。そんな風にすら思えて来るくらい、浅野忠信の演技は絶妙で素晴らしかった。夫婦のラストシーンはとても印象的〜。
我想一個人映画美的女人blog
2009年10月10日

映画 【ヴィヨンの妻】
★★★★ 大谷みたいな人を"魔性の男"っていうんでしょうが、実は佐知も"魔性の女"かもしれないと思うのです。大谷曰く「水が低きに流れるような、気だるくなるような素直さ」が佐知にはあるらしい。万引き事件の申し開きの場で大谷を一目ぼれさせるのも凄いし、昔好きだった弁護士に会いに行く時に決意の口紅を引くところもゾクッときました。松たか子というキャスティングがピッタリだったと思います。可愛らしいかと思えば凛としているし、弱々しいかと思えばしなやかに強い。現役の女としての魅力が滲み出ていました。
ミチの雑記帳
2009年10月10日

『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』(2009)/日本
★★★★ 松さんがとにかく綺麗だし、可愛らしいし、たくましい。ちょっとした襟足の抜き方、ほつれ毛、それだけで劇的な変化を無言のうちに雄弁に語っているのは凄まじい。無邪気な少女のような表情の次に一転して澱んだ目をすることができる。可憐さと女の業は背中合わせ。そのことを彼女の演技につくづく思う。逆に大谷は少し綺麗にまとめすぎたかとも思う。話言葉はほぼ小説の書き言葉と重なっていて、こんなにも丁寧に話すのだろうかとも思う。もっと作家としての部分も観たかった。
NiceOne!!
2009年10月2日


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